タイトル通り、不定期更新のブログです。 気が向いたとき、更新すると思います。 内容としては、オンラインゲーム「トリックスター」「ラテール」などを中心とさせて頂いております。(時々日常のことなども書くかもです)

れあちーのきまぐれにっき

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アクアリース攻防戦 第一章

  1. 2009/01/26(月) 02:41:46|
  2. TS版SS
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久々に小説を書き始めたれあちーですよ(ぁ



今回はずっと書きたかったネタを、勝手に捏造して書いてみましたよww(ぁ




2007年、夏にTS内で起こった出来事、ゴーストブルーモンスター襲撃事件に関しての捏造SSですよw



だって、そんな燃えるようなイベントを、ネタにしない訳にはいかないじゃないですか(ぁ






……まぁ、当時の写真が残っておらず、残念きわまりないのですが、友人達から情報提供を受け、何とかSSにしてみましたw






もう、ほんと好き勝手書いてますので、てら捏造ですよw



実際にこんな事はやっていませんので、ただのお話としてご覧下さいw







それでもOKという方は、続きをどうぞー(`・ω・´)ノ








ゆらり、ゆらりと揺れる水が僅かな光を反射しては、暗い水底を照らす。
水中を漂う光の粒が、ゆらゆらと水の流れに身を任せながら、絶えず水底へと降り注いでいるその姿は、いつ見ても幻想的であった。
その光の粒子のおかげで、俺達はこうして暗い水底の中でも普通に生活していられるのだと、魔術に詳しい知人から聞いた事がある。
何でも、この海域には魔力が溢れており、水の底であるにも関わらず、地上と同様の環境を作り出しているのだと。
水中を漂うこの光の粒子も、その魔力の一部であるマナが視力化したものであるとか……まぁ、魔術的な専門知識を持たない俺には、説明されたとしてもあまりぴんと来ない話なのだが。
ゴーストブルーと呼ばれる海底に作られた都市、アクアリース。常に水と共にあるこの都市に初めて訪れた俺の連れは、あまりの光景にただただ、呆然とした様子で辺りを見回している。
その様子に、自分が初めてこの都市へ訪れた時の事を思い出させられ、僅かに苦笑が浮かんだ。
「……どうだ?初めて来た感想は」
きょろきょろと忙しなく辺りを見回すその金色の頭をぽんと叩きながら、声をかけてやれば、その少女は好奇心に満ちた青い瞳を大きく見開いて、くしゃりと笑った。
「すごいのだぁ……水の中なのに普通に息出来るし……それに、すごく綺麗な街なのだー」
心のままに感想を口にするシーの様子に、そうか、と小さく応えながら、俺は彼女から視線を上げて、もう一度街の中を見回した。
「……閉鎖された時はひどい状態だったけど、随分、元通りになったな」
数ヶ月前の面影を思い返しながら、そう呟くと、興味を引かれたのか、シーはその青い瞳を俺に向けた。
「ラフィにーちゃ、どうしてここは閉鎖されたのだ?閉鎖される前のアクアって、どんな所だったの?」
予想した通りの質問が降りかかり、僅かにしまったな、と顔には出さず心の中で呟く。好奇心旺盛な彼女はどんな事でも知りたがる。
数ヶ月前、ここが閉鎖される事となったその出来事を一から説明するとなると、随分骨が折れそうだ。
だが、簡単な説明ではシーは納得しないだろうし、厄介な事を聞かれたなぁと、誤魔化すように頭を掻いて見せた。
「……ま、その話は後でゆっくりな。先に宿を取るぞ」
「えー」
話をはぐらかすように、歩き出した俺に、シーが僅かにむくれた様子で不満げな声を上げる。それを背中に聞きながら、何から話したらいいかと、頭の片隅で考えた。
あの時の出来事を、どう語るべきなのか。
それは決して、痛快活劇な冒険譚のような、そんな気持ちの良いものではなく、ただ一人一人の冒険者が自分の出来る事を精一杯こなしたその結果だという、何の変哲もない事。
記録にはただの事件としてしか、記されない事かもしれない。
けれど、それでも確かに彼らはそこにいて、命を賭けたのだ。
その記憶は、決して消えるものではない。
名も知らぬ彼らの英雄譚を、どう話すべきなのか。
宿に着くまでに考えなければいけないのかと、心の中で溜息をつきながら、シーと共に水底の街を散策するように歩き始めた……








アクアリース攻防戦  ~名も知らぬ彼らの英雄譚~
    第一章  揺れる水面にたなびく影







「魔物の活動調査依頼だって?」
ぴらりといきなり目の前に突き出されたその紙面にざっと目を通し、俺はその依頼状を持ってきた存在へと視線を向けた。
「そ、今、各地で魔物の活動が活発化しているらしくて、モンスターギルドの方も人手不足だそうよ。それで、私達冒険者に協力を要請しているの」
金色の髪を僅かに揺らしながら、羊族の少女……否、外見は少女のように見えるのだが、彼女は俺よりも年上だ……まぁ、とりあえず、羊族のその女性、槙宮は持ってきた依頼状に関しての説明をくれる。モンスターギルドからの正式な依頼とあれば、報酬も保証されているだろう。
その内容を聞きながら、俺は意見を求めるように向かい側に座る銀色の髪の牛族の青年へと視線を向けた。
俺とこの青年、ミュウラーと槙宮は三人で一つのチームを組んで行動している。
その方がよりでかい獲物を狙えるし、魔物や同業者らから身を守るのにも好都合だった。
なんだかんだで馬が合い、行動を共にしている。時々喧嘩をする事もあるけれど、それなりにバランスのとれた良いチームだと思っている。
ちなみに槙宮とミュウラーは恋人同士の関係だ。お互いを大事に想い合っているその様子は見ていて微笑ましい。……が、時々痴話げんかに巻き込まれるのは勘弁して欲しい所だ。
まぁ、そんな所も、放っておけない所ではあるのだけれど。
「で、具体的に何をするんだ?その活動調査は」
ミュウラーは詳細な内容の説明を求め、槙宮へと視線を向ける。それに槙宮は手元の羊皮紙へとざっと目を通した。
「……まぁ、この周辺地域の魔物の調査をしろっていう内容ね。この近辺の魔物といえば、イソギンチャクやギョライウオとか、海の魔物ばっかりね」
あいつらならたいして強くないし、問題ないでしょう、と言葉を続けながら、槙宮は僅かに肩を竦めて見せた。
ゴーストブルー地域の魔物達はそれ程凶悪なものはいない。どちらかというと気性が大人しい部類の魔物達の方が多い。
だが、ここ最近、各地で魔物達が活性化しており、大人しい魔物ですら気性が荒くなっていると聞く。
ここ、ゴーストブルーも例外ではなく、街に近い場所でも、人を襲う魔物が出ているという。
その為、モンスターギルドから各地にいる冒険者たちを集めて、依頼を出しているのだそうだ。
やはり島で生活していく為にはそれなりに金銭的に必要になる。こういった依頼を進んで引き受ける事は、島での安全を確保する事になるし、生計の足しになる。
むしろ断る冒険者の方が希な存在だろうと思う。
とりあえず、ギルドの方で正式な話を聞いてみようと、俺達はモンスターギルドへと足を運んだ。
街の中心からそれ程離れていない場所にそのモンスターギルドはあった。
こぢんまりとした建物の側の掲示板に、凶悪な魔物達の手配書が貼られている。それに群がるように数人の冒険者たちが入り口の側でたむろしていた。
それを横目に、俺達はモンスターギルドの中へと足を踏み込んだ、のだが。
「はいはい、押さないで。順番にやるから、ちゃんと並んでー!」
可愛らしい少女の声が建物の中に響く。狭い建物の中には既に十人程の冒険者達が詰めかけていた。
奥の方に備え付けられたカウンターの中で、白い猫のような形を模した帽子をかぶった少女が、必死な様子で次から次へと冒険者達の要求を処理している。
現在アクアリースに在中しているギルド員は彼女、ミラただ一人。元々モンスターギルド自体、少数精鋭の中、日々の業務をこなしている。他の地域でもここと同じように、魔物が活発化している今、他のギルド員達もまた、そちらに駆り出されているのだろう。
あまりの人の多さに、俺は二人へと視線を向け、どうするか、と意見を求めたが、二人は小さく肩を竦めて、大人しく待つ事を決めた。
それに習い、俺達は列の最後尾に並んで自分たちの番が来るのを待った。
「……あれ?皆さんもお仕事ですか?」
「え?」
唐突に前に並んでいた冒険者から聞き覚えのある声をかけられて、俺は顔を上げた。
そこにいたのは柔和な顔立ちの獅子族の少年。黒い髪の間から明るい水色の瞳が優しい色を湛えて、俺達を見つめいている。
「あれ?ヴェンさんもここに来てたのか?」
真っ白なコートを羽織ったその少年、ヴェンレクスは俺の言葉に、にっこりと微笑んだ。
「はいー。ここ最近、こちらも大変そうだなっという事で、来てみたのですよー」
穏やかな物腰と、僅かに間延びしたその口調でヴェンレクスは優しく笑う。元々争いを好まない大人しい性格の彼ではあるが、困った人たちを放っておけないという優しい心の持ち主だ。
俺がまだこの島を訪れて間もない頃。銃の扱いに困っていた時に助けてくれた恩人である。
銃の扱いから戦う術まで、俺に叩き込んでくれた彼は、ある意味俺の師匠と言っても過言ではない。
普段は燃えるような赤い髪を持つ狸族の青年と、いつも元気いっぱいな金髪の猫族の少女と行動を共にしている事が多いのだが、本日は一緒ではないらしい。
「今日はいつもの二人は一緒じゃないのか?」
ミュウラーが辺りをちらりと見回して、俺が今考えた事と同じ事をヴェンレクスに問う。それにヴェンレクスはくしゃりと苦笑を浮かべ、くいっと入り口の方を指差した。
「二人は外にいますよ。これだけ人がごっちゃりしてますからね。お前が並んで来いって、押しつけられちゃいましたー」
あはは、と乾いた笑いを浮かべて、ヴェンレクスは肩を竦めてみせる。
なるほど、だからさっき入り口の所に冒険者たちがたむろしていたのか、と一人納得して、いつも通りのその様子に微笑ましさを感じた。
彼と同じような状況の冒険者はこの中に一体どれ程いるのだろうか。連れを待たせている者は結構いるだろうな……
「はいはい、次の人、どうぞー」
「あ、ボクの番のようですね。……では、すみません」
ミラからいきなり声をかけられて、ヴェンレクスは俺達に軽く会釈してカウンターへと歩み寄った。礼儀正しい人だよな、といつも思う。
ヴェンレクスを見送る俺の様子をミュウラーが見下ろし、俺とヴェンレクスの後ろ姿を交互に見つめている。その様子に嫌な予感を感じ、じろりと恨めしげな瞳をミュウラーに向けてやる。
「……言いたい事でもあるのか、ミュウラー」
「…………いや、別に」
僅かに声を低くして凄んでやると、ミュウラーは何事もなかったように明後日の方向へと視線を向けた。
どうやら、俺の予感は的中だったようだ。
言われなくたってわかってるよ。どうせ、俺の身長とヴェンレクスの身長を比べてたんだろっ!
同じ獅子族同士、身長は似たり寄ったりだけど、俺よりも若干ヴェンレクスの方が背が高い。く、どうせ、チビだって言いたいんだろうっ!!
……なんて、一人被害妄想に駆られていると、目的を達したのか、ヴェンレクスがカウンターから離れ、出口へと向かって歩き始めた。
「では、お先にすみません。皆さんも、頑張って下さいねぇ」
すれ違い様ににっこりと微笑んで、ヴェンレクスは颯爽とモンスターギルドを後にした。その様子を見送りながら、自分達の番になったカウンターに歩み寄った。
「はいはい、お待たせしまたー。どのようなご用件で?」
大量の書類に囲まれながら、ミラは歩み寄った俺達に微笑みかける。それに槙宮が手に持っていた依頼状をずいっとミラに見せた。
「これについて、具体的に何をすればいいのか聞きに来たの。条件が揃っているようならその依頼を受けたいと思うのだけれど、まだ大丈夫?」
槙宮から差し出された依頼状を受け取ったミラは、その羊皮紙にざっとを目を通した。
「はい、まだまだ募集は行っているので大丈夫です。依頼内容の説明ですが、まぁ、ここに記載されているように魔物達の調査と討伐ですね。……調査というのは、その地域に大体どれくらいの魔物がどれ程いたか、という数量的な調査ですね。冒険者証はお持ちですか?」
ミラの言葉に、俺は胸元のポケットから島を訪れた時にメガロカンパニーに登録した自分のIDカードを取り出す。
これは冒険者証と呼ばれ、この島での身分を証明する為のものだ。また、銀行のキャッシュカードにもなっており、依頼をこなした時など、このIDの口座に報酬が振り込まれる事となっている。
まぁ、額が少なければそのまま手渡し、という事もあるのだけれど、基本的には口座振り込みが多い。
ミラは俺達のIDカードを受け取ると、ふむふむと小さく呟いた。
「皆さん、Aランクの冒険者さん達ですね。実力は申し分ないです。この様子なら、一番危険度は高いのですが、ゴーストブルー北部の方の調査をお願いしたいですね。あそこはこの近辺よりも、更に魔物達が活性化していて、人を襲った魔物が生息しています。危険手当も他の場所よりも高めに設定されていますが、如何です?」
俺達を伺うように、ミラが僅かに首をかしげて見上げてくる。その言葉に俺達は顔を見合わせた。
「どうする?」
「……まぁ、ライバルは多いでしょうし、早めに受けた者勝ちね」
「そうだな。三人なら大抵の魔物は問題ないだろうし、いいんじゃないか?」
二人の意見で俺達の意向は決まった。
「じゃあ、その依頼、引き受けさせていただきたいのだけど」
「はぁい、了承しました。ありがとうございます」
俺の言葉に、ミラは手元のパソコンをかちかちと操作して、依頼受理の手続きを取ってくれる。その様子を眺めながら、作業の完了を待った。
「はい、受理完了です。では、これが魔物の数量の計測器です。持ち歩くだけで勝手に記録されますので、どなたかお持ち下さい。それと、これが人を襲った魔物の詳細データですよ」
まるで万歩計のような手のひらに収まる程の小さな計測器と、一枚の小型メモリファイルと俺達三人分のIDカードを差し出して、ミラは微笑む。
「ラフィ、計測器、頼んだ」
ぽんっと俺の肩を叩き、ミュウラーがおもむろにそう告げる。槙宮もお願い、と両手を合わせ苦笑している。
はいはい、わかってますよ。どうせ、俺のポケットはある意味四次元並な容量をしている。多少荷物が増えた程度で何の支障もない。
それをわかっているのか、二人はなんだかんだで俺に荷物を押しつける。まぁ、別に良いけどね。
俺はミラからIDカードと計測器、小型メモリファイルを受け取ると、カウンターから離れた。
「では、お願いしまーす。次の方、どうぞー」
俺達の背中に向かってミラはそう声をかけ、次の冒険者の対応に移った。それを横目に俺達はモンスターギルドを後にした。
俺は歩きながら、ポケットから藍色の携帯を取り出すと、その携帯にメモリファイルを挿入した。
かちかちとボタンを操作して、ファイルの中身を確認する。
「……今回はどんな魔物?」
携帯を覗き込む俺の様子に、槙宮がひょいと横から画面を覗き込む。それに俺は見やすいように、液晶画面を二人に向けた。
「……メダマイソギンチャク……だな。どうも通常の大きさじゃないらしい」
画面に映ったそれは、確かにメダマイソギンチャクだった。だが、通常のメダマイソギンチャクとは明らかに大きさが違うらしい。
通常であれば、人の背丈の半分程、なのだが、どうもこのイソギンチャクは人の背丈と同等程の大きさを有しているという。
そんなものが通りすがりの冒険者や町の人を襲ったというのだから、モンスターギルドとしては放置出来ないのだろう。
「……人よりも大きいなんて、見た事ないわ……」
魔物の情報を覗き込んだ槙宮は信じられないという表情で、口元を押さえた。俺だって、そんなでかいのがいるなんて、初耳だ。
「突然変異……にしては、ちょっと不自然だな」
ミュウラーもまた、それに対して疑問を持っているのか、僅かに顔をしかめている。
ま、何にせよ、警戒だけはしておかないと。
「とりあえず、行ってみるしかないな。俺達だけで無理そうだったらまたその時考えればいいさ」
俺の意見に二人は頷き、ひとまず目的の場所へ行く為の準備に取りかかる事となった。
まだ昼を少し過ぎた程の時間だ。海底であるだけにあまり昼夜は関係ないが、流石に街の外で夜を過ごすには危険が伴う。出来れば早めにこなしてしまおうというのだろう。
俺達は簡単な準備をすませると、ゴーストブルー北部へ向けてアクアリースの街を後にしたのだった。









水中を漂う水を震わせて、破裂音が辺りに響き渡る。
手元に走る衝撃に僅かに身体を後退させながら、俺は次の獲物を狙うように銃口を別の魔物へと向けた。
俺はもう一発、近づいてきた魚雷のような形をした魚へと引き金を引き絞り、銃独特の破裂音を再び辺りに響かせた。
俺の放った弾丸は逸れる事なく、ギョライウオの体を貫通し、ギョライウオはまるで空気がしぼむようにぺしゃんことなり、海底に転がった。
水の中で銃を使うというのも変な話だが、この魔力に溢れた海底では地上の状況と何ら変わりがない。おかげで俺は唯一の武器を失わずにすんでいるのだから、ありがたい限りだ。
「……っ、数が多いってレベルじゃないぞ、これっ!」
また別のギョライウオへと狙いをつけながら、俺はすぐ側にいる二人へと愚痴るように言葉を投げる。
それに二人も同感と考えているのか、お互い背中を合わせ、囲まれないよう細心の注意を払っている。
俺達の側には無数の魔物達が寄ってきている。
死骸を増やせば、その分、その魔物の血が他の魔物達を呼び寄せる。
水中に混ざった血の匂いは、海底に住む獰猛な魔物達を呼んでしまう。
しかし、倒さなければ俺達の方が危ない。このままじりじりと消耗させられ、やがては魔物の餌食となる。そんな結果は断じて嫌だ。
「……まずいな……こんなに数が多いなんて、誤算だ」
ざんっと俺の背後で魔物を切り捨て、ミュウラーが愚痴る。その言葉に同意しながら槙宮もまた呪文の詠唱を続けている。
「ええ、これじゃ、逃げ場がなくなるわ。……一時撤退しましょう、二人共」
魔法の詠唱を終え、風の魔法を放ち、一部の魔物達を退ける。槙宮は俺達を振り返り、撤退を促した。
それに俺達は直ぐさま同意し、槙宮が作り出した道へと駆け出した。
俺は走り様に腰のバックから数個の黒い球体を取り出して、俺達の後に付いてくる魔物達に向かって投げつける。
ピピッと僅かな機械音を発したそれは、少しの間をおいて、続けざまに爆発した。
水の中では音が広がりやすい。ぼぼんっと海底の砂を巻き上げて、爆音が辺りに木霊した。
背後で巻き上がった砂が俺達の姿を魔物達から隠してくれる。
俺達はそのまま海底を走り抜け、見つけた難破船の中へと入り込んだ。
「……はぁはぁ、何だって言うんだ……この魔物の多さは……」
「まったくね……なにが、ちょっと危険度は高いけど、よ。危険すぎるわ、この状態は……」
ゼイゼイと、息をつきながら、小声で俺達は愚痴った。確かに魔物一匹一匹は俺達にとって他愛もないものだ。だが、それが大量に集まってくれば話は別。
油断していた訳ではないが、まさかこれ程までに魔物達が活性化しているとは……
モンスターギルドの危惧をようやく理解し、俺は甘く見ていた事を痛感した。
これで少しは、集まった魔物達が分散してくれると良いのだが……俺は切れた息をつきながら、ずるずると壁にもたれて座り込んだ。
「……ここでしばらく様子を見るぞ。あれだけ集まってたのが少しは減ればいいがな」
ミュウラーもまた切れた息をつきながら、手に持っていた剣を腰の鞘へと収めて、俺の隣へと腰を下ろす。それに槙宮もまた習い、ちょこんと座り込んだ。
沈黙が辺りを支配する。僅かに空気が漏れているのか、船の板の亀裂部分から、ぽこぽこと小さな気泡が漏れている。
俺は息を整えるように大きく深呼吸して、息苦しさを解消する。二人もそれぞれ疲労が回復してきたのか、平常に戻っている。
「……しかし、なんでこんな大量増殖しているんだ?まだ繁殖期には遠いだろ?」
俺はふと浮かんだ疑問を二人へと投げかける。繁殖期は春に一度訪れるものだ。今はまだ夏の時期だ。繁殖期はもうとっくに過ぎているはずなのだが、この魔物の多さは異常だ。
それに、繁殖期だからといって、この量というのもおかしい。
何かがおかしい事は二人にもわかっているのか、重い表情を浮かべている。
「……さっきから、気になってる事があるの……ここ、マナの量が非常に多いわ。まるで魔法磁場が飽和状態みたい……」
口元を押さえ、槙宮が恐る恐るといった様子で、その事実を伝えてくれる。マナの量が多いからと言って、それが何か問題なのか。
俺もミュウラーも事の重大さがわからず、説明を求めるように槙宮を見た。
「……この水中を漂うマナが、水の中でも地上と同じ環境を作り出しているというのは知っているわね?……マナは世界にとってなくてはならないもの。自然にとって栄養みたいなものなの。……それが異常な多さになっている、という事は、どういう事かわかるわよね?」
槙宮の説明にようやく合点が行き、なるほど、と小さく呟いた。
「……つまり、マナが異常に溢れている為に魔物達の生態に影響を与えている、という事か」
この大量増殖も、それが影響しているのだと、ようやく理解した俺は顔をしかめて、頭を掻いた。
「なんでこんなにマナが溢れているのかしら……自然現象とはちょっと考えにくいわ」
世界はバランスを保って成り立っている。それがこれ程までに狂うにはそれなりの理由があるものだ。槙宮は何かを確信した様子で、俺達を見た。
「……人為的な何かがあるかもしれない……って、事か」
「その可能性が非常に高いわ。……この付近を探索しましょう……っ」
そう槙宮が決断を下し、立ち上がったその瞬間、ずずんと海底が大きく揺らいだ。
ぐらりと地面が大きく揺れて、地鳴りのような音が遠くから響いてくる。
「きゃっ」
槙宮があまりの衝撃にバランスを崩し、倒れかかる。それをミュウラーが慌てて受け止めた……のだが、立っていられない程の地面の揺れに、ミュウラーもまた、槙宮を抱えたまま海底に膝をつく事になった。
ぐらぐら揺れるその衝撃に、難破船がぎしぎしと悲鳴を上げて、ぱらぱらと木くずを降らせる。地震……の影響で、倒壊する危険を考えたが、なんとか耐えてくれたようだ。
数秒の間、ぐらぐらと揺らいでいた地面は、緩やかに穏やかになっていく。
「……っ、止んだ……か?」
俺は辺りを見回しながら、穏やかになった地面を見下ろした。まだ余震で少し震えているけれど、随分静かになったようだ。
海の底であるだけに津波の心配はないが、結構でかい地震だった。
海上の街は大丈夫かなんて、ふと心配が頭を過ぎ去ったが、とりあえずは目の前の出来事に集中しなければ。地上の事を心配するより、まずは目の前の自分たちの安全の方が優先だ。
俺達は静かになった外の様子を伺いながら、難破船から這い出した。
余震でまた大きな地震が来たら、今度こそ倒壊する危険性がある。外も随分静かになったようなので、俺達は行動を再開する事にした。
なるべく魔物と遭遇しないよう、細心の注意を払いながら、海底を早足で駆け抜ける。
地震の震源地はどうも、ゴーストブルー地方の入り口近辺のような気がする。あそこにも小さな町があり、それなりに住人達もいるはずだ。
何かあったのかもしれない、と、俺達はゴーストブルー入り口方面へと進路を取った。
出来るだけ大きな海草が群生している方へ進み、海草に紛れて海底を進む。
先程のように囲まれたら、またしても消耗戦を強いられる事になる。それだけは避けたい所だ。
「……待って……ここ、何かおかしいわ……」
海草の間をすり抜けていると、ふと槙宮は何かを感じたのか、立ち止まって辺りを見回した。その様子に、俺はミュウラーと顔を見合わせた。
……と、その瞬間、ぞくりと何かが俺の感覚を震わせた。
何かがいる。俺は瞬時にそのざらつく殺気を肌で感じ取り、直感した。
「槙宮、その海草の側からすぐに離れろっ!」
俺は槙宮の背後にそびえる海草から殺気を感じ取り、直ぐさま叫ぶ。が、咄嗟の事に槙宮は驚き、動く事が出来なかった。
その瞬間にもそれは見る見る間に姿を変貌させ、何も知らない槙宮へとその魔手を伸ばした。
「楓っ!!」
俺が感じた危険を理解したミュウラーが槙宮に向かって地面を蹴った。
間一髪の所でミュウラーが槙宮の体を抱きかかえ、伸ばされた魔手をかわした。俺は銃をかまえ、二人に襲い掛かろうとしたその海草に向かって引き金を絞った。
乾いた破裂音が響き、伸ばされた触手の一本を弾き飛ばす。銃弾が突き抜けた事で、風船が弾けたかのように、簡単に千切れ飛び、海底に転がった。
赤黒いその触手は千切れた今も、うねうねと気持ち悪く動いている。
「……こいつか。人を襲ったメダマイソギンチャクって……」
俺は海草に擬態していた魔物を睨み付け、再び銃口を構えた。
少し離れた位置に槙宮を下ろしたミュウラーもまた、腰の鞘から剣を抜刀し、うねうねと蠢くメダマイソギンチャクを睨み付けた。
人の背丈程のそのイソギンチャクは、中心と思しき場所から、にょろりと一本の触手を突き出した。ぎょろりと俺達を睨み付けるそれは、どうやらこのイソギンチャクの目玉のようだ。
「……こいつ……アカメ、か」
俺達を睨み付けるその目玉は血走り、褐色だった。ただのメダマイソギンチャクであると思っていたのだが、どうやら、それよりも凶暴なアカメイソギンチャクだったようだ。
こいつはちょっと厄介だなっと、下唇を舐めながら、俺は銃を持つ手に力を加えた。
「……あ、見て、二人共っ!あのイソギンチャクの足下っ!」
イソギンチャクを睨み付ける俺達に、槙宮は何かを見つけたのか、俺達に指し示す。イソギンチャクの動きに注意を払いながら、俺は槙宮が指し示したその先を見た。
「……なんだ、あれ……魔法陣?」
何らかの儀式にでも使うかのような巨大な魔法陣が海草の間に紛れて描かれている。どうやら、この巨大なイソギンチャクはそれの守護者、とでも言うのだろうか。
「……近くで見ないとわからないけど……多分あれが、この大量のマナを地下から吸い上げている原因よ。……ここのマナは純度が高すぎるわ」
魔力酔いしそう、と僅かに顔をしかめて、槙宮が一人呟く。その様子を気遣いながら、ミュウラーが油断なく剣を構えている。
「……へぇ、ここを見つける冒険者がいるとは、誤算だったな」
「っ!?」
俺達の、どの声にも当てはまらない青年の声が響き、俺達は辺りを見回した。
ぶんっと景色が歪むように空間の一部が歪み、その中から青い髪を持つ獅子族の青年が姿を現した。
イソギンチャクの側にふわりと着地したその青年は、俺達の姿をその青い瞳で一瞥すると、ふっと笑った。
「……あんた……何者だ?」
あれ程俺達に殺気を振りまいていたイソギンチャクが、突如現れた青年には一切手を出す気配を見せない。どうやら、この魔法陣に関わりがある者のようだ。
「別に、名乗る程の者じゃないよ。それに名乗ったって意味がないよ。……どうせ君達、ここで死ぬんだから」
にっこりと、無邪気……にその青年は微笑んだ。まったく曇りもなく笑うその姿に、冷たいものが走り抜けるのを感じた。
こいつ、相当強い。肌で感じる相手の威圧感に、俺は直感的にただ者ではないと感じ取った。
それは二人も同じなのか、僅かにじりっと後ずさった雰囲気が伝わってきた。
「まぁ、僕が直接手を下してもいいんだけど、僕も何かと忙しい身でね。君達の相手はこのイソギンチャク君で十分だよね」
青年はふっと威圧感を緩めると、傍らに佇む巨大なイソギンチャクを仰ぎ見る。そしてにっこりを微笑むと、すっと俺達に背を向け、魔法陣へと歩み寄った。
「ま、待ちなさいっ!何する気なのっ!!」
槙宮が嫌な予感を感じたのか、背を向けた青年へと声を張り上げる。が、青年は振り返る事なく魔法陣へと歩み寄っていく。
「まずい、止めてっ!!何かする気よ、あいつ!!」
槙宮は青ざめ、呪文詠唱を始める。それにミュウラーは槙宮の意志を酌み取り、青年の行動を阻もうと、剣を構えて地面を蹴った。
だが、それはイソギンチャクが振るった触手に阻まれ、ミュウラーは悔しそうに立ち止まった。
「……ふふ、イイ子だ。イソギンチャク君。そのまま、彼らを近づけさせないでね」
その様子に満足したのか、青年はくすりと笑みを零し、イソギンチャクを激励するように小さく呟いた。
まずいな、このままでは、もっと良くない事が起こりそうだ。
肌で感じる嫌な予感に寒気すら感じながら、俺はイソギンチャクを、その後ろにいる青年を睨み付けた。
考えている暇はない。
俺は瞳を閉じ、我が身に宿る精霊を呼び起こした。
「メル、力を貸してくれ」
鎖骨の辺りにある契約印がカッと熱くなる。周りのマナを吸収して、ポンッと小さな少年が俺の側に具現化した。
青いスカーフをたなびかせ、色素の薄い茶色の髪を持つその少年、メルクリウスは俺の姿を見つけると、ふわりと俺の側に寄ってきた。
これが俺の精霊、水星の力を持つメルクリウスだ。こいつとはそれなりに死線を越えてきた、俺の戦友とでも言うべき存在だ。
「ますたー、俺の力が必要?」
「ああ、見ればわかるだろ。力を貸せ、メル」
「はいはい、精霊使いが荒いますたーだね、ホント」
俺の言葉にメルは僅かに肩を竦めて笑ってみせる。ふわりと俺の側に寄ると、メルは俺に同調するようにすっと目を閉じた。
メルの特殊能力は感覚の増幅だ。メルと力を合わせる事で俺の命中精度は更に上がる。
その代わり、感覚が鋭くなりすぎて、長時間の同調は俺の方が耐えられない。
長期戦にもつれ込ませる訳にはいかない。俺はメルと精神を繋ぎ合わせ、感覚の増幅を行った。
メルと精神がリンクする感覚。五感が自分の体を離れ、周りに散らばる感覚、とでも言うのだろうか。自分をまるで客観的にでも見ているような感覚を味わいながら、俺は目の前のイソギンチャクを睨み付けた。
伸ばしてくるその触手を一本一本、確実に打ち抜いて、足を減らす。伸ばされた触手に捕まらないよう、動きながらの射撃は命中精度が下がる。だが、今はメルとリンクしている俺にとって、それはたいした問題ではなかった。
「はあぁぁぁっ!!」
ミュウラーもまた、地面を蹴りつけ、凄まじいスピードでイソギンチャクへ猛襲をかけている。彼の側にも白馬に乗った甲冑の少女が浮いている所を見ると、彼もまたその身に宿る精霊の力を借りている様子が窺い知れる。
彼の精霊は確か、守護騎士ヒルデだったな、と頭の片隅で彼の精霊の名を思い出しながら、俺は目の前のイソギンチャクに意識を集中した。
「ガルベスタタイフーンッ!!」
長い呪文詠唱が終わったのか、水中のマナが集まり、槙宮の意志に従い、数本の竜巻を巻き起こす。
その竜巻はぐるぐるとイソギンチャクを取り囲み、赤黒く蠢くその触手を、その体を、どんどんと引き裂いていく。
流石にマナの量が多いだけに、魔法の威力も格段に上がっているようだ。
だが、その分、術士への負担も大きいらしく、僅かにぐらりとよろめきながら、槙宮が魔術のコントロールに細心の注意を払っている。
「その魔法陣から離れろーーーーーっ!!」
動きを止めたイソギンチャクの横をすり抜け、ミュウラーが剣を振りかぶって、背を向けている青年へと斬りかかる。
だが、その振り下ろされた剣は相手を捕らえる事はなかった。すっと簡単な動作でミュウラーの剣を避けた青年は、僅かに後退するとミュウラーへと冷たい視線を投げ、目にも止まらない早さで数本のナイフを引き抜いた。
そのまま、鋭い動作でミュウラーに向かってナイフを振りかぶり、投げつけた。
「っ!?」
至近距離からの投擲に、ミュウラーは咄嗟に対応が遅れる。剣を振り下ろしていたその動作から直ぐさま自分を守るように剣を構えたのだが、それでは遅い。
見る見る間に迫ってくるナイフに、多少の傷を覚悟して、ミュウラーは歯を食いしばった。
俺は直ぐさま銃口を構え、引き金を引き絞る。
がきんっと甲高い音を立てて、そのナイフはミュウラーにあたる前に弾き飛ぶ。一発の銃弾が一本のナイフを弾き飛ばし、そのナイフが他のナイフの軌道をずらし、ミュウラーには一本のナイフも当たらずにすんだ。
その様子に、青年が悔しそうにぎりっと一度だけ歯を食いしばり、冷たい視線を俺に向けた。
俺は油断なく、硝煙を立ち上らせる銃口を青年に向け、動きを封じる。一歩でも動けば、命はないぞ、と殺気を交えて睨み付けると、青年の冷たい視線とかち合った。
「……異様に頑張るねぇ、君達。君達がいくら頑張っても、結果は変わらないと言うのに……だから冒険者というのは厄介なんだよ」
ぼそりと呟くように、青年は俺を睨み付けたまま一人愚痴る。俺は引き金を引き絞り、破裂音を水中に響かせた。
「……そのまま、動かないで貰おうか」
すぅっと、青年の頬に一筋の亀裂が走り、血がにじみ出す。俺の放った弾丸が顔すれすれの位置を掠めたからだ。
それに青年は冷たい表情のまま、へぇ、と小さく感心したかのような声を上げた。
「……君、良い度胸だね。この僕に真っ向から喧嘩ふっかけるなんて、なかなか出来る事じゃないよ」
すごいね、君。と青年は冷たい瞳のまま、けらけらと無邪気に笑う。それにぞっとしたものを感じながらも、狙いを外さないよう、銃を構えた。
だが、その瞬間、まるで毛が逆立つようなぴりぴりとした殺気を感じ取り、俺は慌ててその場から飛び退いた。
ぶんっと水を震わせて、イソギンチャクの触手が俺を捕まえようと振り下ろされる。
咄嗟に飛び退いたおかげで直撃を免れたものの、青年から狙いを外してしまった。
その瞬間を待っていたのか、青年は一瞬で俺の目の前に駆け寄ると、凄まじい速さで蹴りを繰り出してきた。
「――っ!?」
俺は咄嗟に銃を体の前で構える事で、直撃を避けたものの、その衝撃は相当なもので、体ごと吹っ飛ばされて、地面に転がった。
なんて、重い蹴りだ……俺は衝撃にしびれる腕の感覚に、蹴りの重さを痛感させられた。
俺は直ぐさま起きあがろうと、体を起こしたその瞬間、ずるりと足を引っ張られる感覚に再び地面に転がされた。イソギンチャクの触手が俺の足首に巻き付いている。
「っ、離せっ、この……うわっ!?」
俺は咄嗟に銃をかまえ、打ち抜こうとしたのだが、それよりも先に引きずられ、持っていた銃が手から滑り落ちた。
先程の蹴りの影響で、握力が低下していた所為だ。俺はぎりりと歯を食いしばり、目の前に迫るイソギンチャクを睨み付けた。
「ラフィオ!!」
その俺の様子に、ミュウラーが慌てた様子で駆け寄ってくる。だが、それを阻むように青年がミュウラーの前に立ちふさがり、目にも止まらぬ早さでその腹部へ拳を突き出した。
ごすっと、鈍い音を立てて、ミュウラーの腹部に青年の拳が滑り込む。その衝撃に、ミュウラーは小さく呻き、その場に膝をついた。
流石に鍛え上げられた体を持つだけあって、昏倒する事はなかったが、それでもかなりの衝撃を受けたのか、すぐに動く事が出来なかった。
随分な優男のように見えるのに、体術も半端ないようだ。
俺はイソギンチャクの触手を振り解こうと努力しながら、そんな事を傍目に観察した。
槙宮がふらつきながらも、俺を助けようと呪文詠唱をしている。俺はどうにかしないとと、上着の袖に隠していた二丁のデリンジャーを引き抜いた。
「……全く、色々邪魔してくれて……段取りがメチャメチャになるじゃないか」
ぼそぼそと青年は呟きながら、膝をついたミュウラーを無視して魔法陣へと歩み寄る。
なんとかして、あいつを止めなければ……気持ちばかりが焦り、ぎりっと歯を食いしばる。
俺は足下に絡みついた触手に向けてデリンジャーの狙いをつけて引き金を引き絞った。
だが、ライフル銃よりも威力の劣るこのデリンジャーでは太い触手を千切る事は出来ないのか、触手はびくともしなかった。
「ウィンドエッジ!!」
槙宮の詠唱が終わり、風の刃がイソギンチャクの胴体を切り裂く。それに声にならない悲鳴を上げて、イソギンチャクは仰け反った。胴体を切り離されたイソギンチャクは海底に倒れ込み、のたうち回っている。そのおかげで俺は触手を振り払い、ようやく立ち上がる事に成功した。
そんな俺達の様子を無視して、青年はゆっくりと魔法陣の側に佇んだ。
一体何をするつもりなのか、すっと手のひらを魔法陣へと突き出し、何らかの古代語を呟く。
その瞬間、地響きにも似た地鳴りが起こり、魔法陣が青い光りを放ち始めた。
水中に満ちあふれていたマナが一気に吸収されていくその様子は、魔力を視力化出来ない俺にもはっきりと見て取れた。
やがて魔法陣から溢れたその光は、海上に向けて光の柱を立ち上らせた。
それが一体何の意味を持っているのか、魔法に関して詳しくない俺にはさっぱり理解出来なかったが、決して良い事ではないだろうという事だけはわかった。
魔法陣が起動した影響か、水の流れがぐっと圧力を増し、海草をはためかせる。
俺達もその圧力に僅かに身体を後退させ、衝撃に耐えた。
「これでようやく、段取りが出来た。……後は、最終段階に入るだけだ」
ぼそりと呟いて、青年はふうと息をつく。その様子に、槙宮は青年を睨み付けた。
「一体何をしたの!最終段階って、どういう事」
槙宮が杖を突き出し、声を荒げて青年を問いつめる。それに青年は応える気はないのか、冷たい瞳で槙宮を見た。
と、その瞬間、再び空間が歪み、その歪みの中から今度は兎族の少女が現れた。
「あー、あんた、まだこんな所にいたのー?魔法陣起動するのに、一体どれだけ時間かけてるのよー」
他の所も起動したのよ、と続けながら、ぴょんっと地面に降り立った青い髪のその少女は青年の姿を見つけると、高い声で青年を非難した。それに厄介なのが来たという様子で、青年が僅かに肩を竦めた。
「……アクィラ。そうきーきー騒がないでよ。ちょっとしたトラブルだ。問題はないよ」
青年は肩を竦めてみせると、その少女の側へ歩み寄った。
その瞬間、ゴーストブルーの各所で、ここと同じような光が海上に向けて立ち上る。
ごっと衝撃に水が震えるのを感じながら、俺は立ち上った光を確認した。
ここの光の柱を合わせて全部で四本。位置を察するに、アクアリースの都市を囲むようにその光の柱は立ち上っているようだった。
「……これで準備は完了した。この僕に喧嘩をふっかけたその根性に免じて、今日の所は見逃してあげるよ。精々、このイベントを楽しむ事だね。……まぁ、たかが冒険者に出来る事なんて限られてると思うけどね」
にっこりと無邪気な笑顔を浮かべて俺達を見た青年は、皮肉を込めた口調でそう言った。
それに俺はぎりっと歯を食いしばり自分の無力さを呪った。
目的を達した彼らにとって、俺達なんてどうでも良い存在という事か。
確かに実力は全く歯が立たない状況だ。だからといって、この事態を引き起こしたこいつらをただ逃がしていいのか?
俺はデリンジャーを持つ手に力を込めた。
だが、俺が銃口を向けるよりも早く、彼らの姿が歪み、現れた時同様唐突にかき消えた。
一体何者だったんだ、あいつらは……彼らがいた空間を睨み付けながら、これから一体何が起こるのか、言いしれぬ不安に胸がうずいた。
「……ミュウラー、大丈夫?」
槙宮はいまだ膝をついているミュウラーへと駆け寄る。それにミュウラーは僅かに顔をしかめながら、立ち上がった。
「……っ、悪い、止められなかった……」
「ミュウラーの所為じゃないわ。気にしないで……」
ぎりっとミュウラーもまた悔しさを感じているのか、苦虫を噛みつぶしたように顔をしかめている。
先程まで光の柱を立ち上らせていた魔法陣はゆっくりと落ち着きを取り戻している。
他の柱があった位置にも、もう光の柱は存在していなかった。
おかげで圧力を増していた水の流れも落ち着きを取り戻し、海は穏やかになっていた。
まるで、嵐の前の静けさのようだと、不安が立ちこめる。
あれだけ溢れかえっていた魔物の気配も何処か希薄で、それが逆に不安を駆り立てる。
とりあえず、ここに留まっていても仕方がないと、アクアリースへ戻る為にゴーストブルー入り口へと向かった。
あそこはアクアリース直通のテレポート施設がある。
そこからアクアリースへ飛び、先程見た事をモンスターギルドへ伝える。
この出来事は、俺達の手には余る事件だろうという、総意での決定だった。
俺達は一路、ゴーストブルー入り口へと向かったのだが、辿り着いた先で俺達はあまりの光景にただ呆然と立ち尽くした。
町の中に溢れかえる魔物達の大群。破壊される家々と、混乱し逃げまどう人々。
町の至る所であがる火の手を見つめ、一体何が起こったのだと、あまりの光景にただ絶句した。
「……一体……これは、何……?」
槙宮が震える声で、そう零した言葉に、俺もミュウラーも応える術を持たなかった。




……こうして、俺達の知らない所で、ゴーストブルー全域を巻き込むモンスター大量発生事件の幕は切って落とされたのだった。





続く……
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comment

  1. 2009/01/26(月) 20:10:33 |
  2. URL |
  3. るびーるびー
  4. [ 編集 ]
はううううう!
かすと!!!wwww
なんというナイスな配役w 燃えた(ぇ
ああぁん、続きが気になりますよっ!!後編にwktkしながら悶えつつ待ちますね(プレッシャー)
題名テラかっこよす(*´д`*)そしてお3方素敵…((((*ノノ)
ヴェンさんかわいいの~(*´ェ`*)

  1. 2009/01/27(火) 03:31:00 |
  2. URL |
  3. ヴェン
  4. [ 編集 ]
のゎ!ほんとにヴェンが出てるのですー!何といいますか見事にキャラを掴んでいらっしゃる所に感激しました♪
出させて頂き誠にありがとうございまーす!ひそかに出演するのが夢だったのでウレシいです><b
しかもかわいい言って頂けちゃいましたよん@ω@ノ  るびーさんもありがとうございますw

臨場感があって、絵も想像しやすい表現でまとまっていますよね★
あっなるほど、かすとなんですね!それはアツイですな。続きが気になりますよーw
私ももだえつつ待ちます><b

  1. 2009/01/27(火) 13:26:46 |
  2. URL |
  3. ミュウラー
  4. [ 編集 ]
じゃあ便乗して悶えつつまっt(ry
触手率が低く残念ですた(ぇ
かすとの役割が予想外すぎて、次回にwktk

  1. 2009/01/27(火) 19:43:03 |
  2. URL |
  3. れあちー
  4. [ 編集 ]
れすですよー


>るびーるびーさん
そうです、かすとでs(ぁ
名前はほとんど出さなかったけど、バレバレですねー(☆゜д゜)ニヤリw
これから更にアツイ展開を予定しておりますが、私の技量で何処まで書けるやら……が、がんがりまつ。

あとごめんなさい、ルビーさんの出番はもうちょっと後です><


>ヴェンさん
二話目に出るとか言って、フライングで出しましt(ぁ
だって私の方がまちきれなかっt(ノд`@)
初ヴェンさん、好評のようで嬉しいですw
あんな感じで良かったのでしょうか…第二話はもっと出せると思います。


>ミュウラーさん
流石、便乗犯めwww(ぁ
触手率を求めるな、触手率をww
ミュウラーさんをひんむけなかったのが残念でs(ぁ
みんなしてわくてかしないで下さいよ(ノД`)・゜・。
ご期待を見事に裏切りますからねっ(ぁ

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