タイトル通り、不定期更新のブログです。 気が向いたとき、更新すると思います。 内容としては、オンラインゲーム「トリックスター」「ラテール」などを中心とさせて頂いております。(時々日常のことなども書くかもです)

れあちーのきまぐれにっき

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心無き人形が奏でる狂想曲 前編

  1. 2008/10/07(火) 00:22:13|
  2. とある伯爵家
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  4. | コメント:0
伯爵家第二話ですよー。


とっても、時間がかかって申し訳なくorz



長くなりそうなんで、前編後編にわける事にしましたよっと。




|д・) ソォーッ…後編はまだもうちょっとかかりそうです。


すみません、すみませn……




であ、続きをどうぞ(`・ω・´)ノ









私は踊る……貴方が望むなら。
私は歌う……貴方に捧げる愛の歌を。
私は笑う……貴方が微笑みかけてくれるなら。




私は心の無い人形。歌う事しかできない自動人形。
されど、貴方が傍にいてくれるなら……
私の世界は色を変える。





御主人様……
嗚呼、御主人様……
どうか……何処へも、何処へも行かないで下さいまし。
私の傍で、笑っていて下さいまし。
私は貴方の剣になりましょう。
私は貴方の盾になりましょう。
貴方が望むなら、何でも致しましょう。
それが私の生まれた理由。私の存在価値。




私は踊る……貴方を守る為に。
私は歌う……貴方に捧げる狂想曲を。
私は笑う……貴方を害す者を排除して……




                       心無き自動人形の手記より――









とある伯爵家の事情 ~心無き人形が奏でる狂想曲 前編~








空気がぴりぴりと緊張に張りつめるのを肌で感じ取りながら、彼女は刀の柄を握り締めた。
鞘に収まったままの状態で構えを取り、呼吸を整える。
勝負は一瞬で決まる。微塵の油断も隙もあってはならない。
彼女と対峙するそれは、微動だにしない。その様子を一瞥した彼女は、精神統一をするように、一度眼を閉じる。次に眼を見開いた時に全てが決まる。
彼女は息を吸い込むと、カッと眼を見開いて、目にも止まらぬ早さで刀を抜刀した。
その瞬間、全ての時が止まったかのような錯覚が辺りを包み込んだ。
空気がひやりとした冷気を伴って、吹き抜けていく。
一瞬の空白が過ぎ去って、彼女は音もなく刀を再び鞘の中へと納めた。
その数秒後、彼女と対峙していたそれは、はらりと音を立てて、その形を変貌させた。
何事もなかったそれに、突如光の軌跡が幾本も走り、ばさばさと切り取られたそれが地面へと落ち、形状があらわとなる。
緑色の巨大な熊の形の木が出来上がり、刀を握り締めたままの彼女は目的を達したのか、僅かに息を吐き出して立ち上がると、満足そうに微笑んだ。
「よしよし、上出来、上出来♪」
金色の髪を揺らしながら、こくこくと満足そうに頷いて、シーは刀を背中に背負うと、代わりに手にした箒で、落とした枝を掃き出した。
「なぁ、それって“いあい”とかっていう東国の剣技だろ?何処でそんなの習ってきたんだよ?」
それを少し離れた位置で気怠げな様子で座って眺めていたラフィオが、疑問そうな表情で彼女が背負っている刀を指さしながら問いかけた。
ここよりも、ずっとずっと東に位置する小さな島国。そこで開発されたと言われる古剣術の一種である“居合い”。そんなものを、平然と扱って見せた彼女は先程の緊張感など感じさせない気の抜けた笑顔を浮かべ、
「私にガーデニングのノウハウを教えてくれたおじーさんだよー」
と、昔世話になった老人の顔を思い浮かべながら、事も無げに言った。
それにラフィオは僅かに顔をしかめ、
「……そのじーさんも、刀でガーデニングするのかよ」
と、非常識きわまりない彼女のガーデニング技法に、げんなりとした表情を浮べた。
「え、ガーデニングって、こうやるもんだって教わったんだけど、間違ってた?」
げんなりした表情を浮かべるラフィオの様子に、心底きょとんとした顔でシーは首をかしげる。どうやら根本的に感覚がずれ込んでいるらしい。
そんなシーの様子に、否定する気も起きなくなったのか、ラフィオはひらひらと力無く手を振り、
「あー、もう好きにやればいいよ」
と、投げやりな返答を返した。
全く、何処の達人だよ、そのじーさんっと、ぼそぼそとラフィオが呟くのを眺めながら、シーはてきぱきと落とした枝を取り除いていく。
早く片づけて次に取りかからなければ、他の仕事に移れない。普段は二人でこなしている屋敷の掃除を、今日は一人でこなさなければいけないので、やる事は山積みだ。
もう一人のメイドである槙宮は、今日から2、3日の間、この屋敷から離れる事となっているのだ。
普段は仕事の時以外、屋敷を離れる事はないのだけれど、定期的に暇を貰わなければいけないらしい。
どうもその理由は、定期メンテナンス……というものを受けに行く為らしい。
                               オートマタ
詳しい事はわからないけれど、槙宮は“自動人形”と呼ばれる存在なのだそうだ。
見た目は何ら人と違いがないように見えるのだが、彼女は精巧に造られた人形で、人とは根本的に違うものらしい。
だが、彼女は自らの意志で動き、食物を食べ、休養も必要とする。
人の痛みや喜び等も理解している彼女は、人形が持つはずのない心を持っている。
何処までが人間で、何処までが人形なのか。その線引きすら怪しいものとなっている程、彼女は人に近い。
ただ、一つ人とかけ離れているのはその身体能力。元々主人を守る為に造られた存在であるが故に、彼女には戦う術がプログラムされている。
女性の力では扱える筈のない怪力を持っているのも、それ故だ。
出会い頭にいきなり地面を陥没させたその姿は、今でも印象強く、シーの脳裏に残っている。
そんな彼女にも、弱点がある。精巧に造られたが故に定期的に創造主の元でメンテナンスを受けなければ動作不良を起こしてしまうのだそうだ。最も、自分でも簡単なメンテナンスは教わっているそうで、そうそう動作不良を起こしはしないそうだけれど。
元々彼女は魔界と呼ばれるここではない異世界で造られた。人の世界ではそこまでの科学技術は今だ発展してはいない。
彼女を造ったのは一人の魔族の青年だという。魔族と人間では寿命の感覚が違いすぎるので、定期的といっても、人間の寿命にしてみれば長すぎるくらいの期間を空ける事になる。
50年に一度の周期でその定期メンテナンスは行われているのだそうだ。
元々、臨時のメイドとしてシーを採用したのは、この定期メンテナンスの時期が近づいていた為でもあったらしい。まぁ、最も、50年もの時間が空いてしまうのでは、次のメンテナンスの時にはシーはいなくなっている可能性の方が高いのだが。
今回はシーのおかげで安心してメンテナンスに行けると、槙宮は笑いながら出かけて行った。
その期待に応える為にも、彼女が帰ってくる頃には屋敷をぴかぴかにしておかなければ。
シーはメラメラと闘志を燃やして、使命感に溢れていた。
「よぉーし、この調子でお掃除頑張るぞぉぉぉぉ!!」
彼女はぐっと両手を握り締めると、吠えるようにまだ日の高い空に向かって大声で気合いを入れた。
その様子を僅かに冷めた眼で見つめながら、やれやれと、ラフィオが肩を竦めたのだが、使命感に燃えるシーはそれに気がつかなかったのだった。










キィィッと、薄暗い部屋への扉を開き、槙宮は部屋の中へと足を踏み入れた。
橙色のほの明るい蝋燭の炎がいくつも部屋の至る所に灯され、独特の雰囲気を醸し出している。
薄暗い室内を見回し、槙宮は目的の存在を見つけると、僅かにスカートの裾を摘み、相手に向かって一礼した。
ゆったりとした動作で一礼する彼女の様子を眺めながら、切れ長に輝く金色の瞳を細め、浅黒肌の青年は口元に笑みを浮かべて彼女を迎えた。
肩口より少し上で揃えられた黒髪を僅かに揺らしながら、その青年は槙宮へと歩み寄った。その様子に、槙宮は顔を上げると、ふわりと優しい微笑みを浮かべて青年を見つめた。
「お久し振りです。お父様。お変わりがないようで安心しました」
槙宮は青年を見つめたまま、鈴のように澄んだ声で久々に再会する創造主に言葉をかけた。
そう、この青年こそが、槙宮を造った人形師。名をラティリアという。
「お帰り、私の可愛い楓。クレヴァンス伯に苛められてはいないか、いつも心配していたよ。君も、元気そうで何よりだ」
僅かに軽口を叩くように、ラティリアは眼を細めると、悪戯げにくすりと笑う。その様子に、槙宮はあらあらと頬に手を添えて、苦笑にも似た笑みを浮かべた。
「まぁ、お父様ったら、人が悪いですわ。ミュウラー様はそんな方ではない事、ご存じでしょうに」
「さぁて、どうだかねぇ。もし君に無体を強いるようであれば、私が黙ってはいないよ。そういう時は遠慮なく私に言いなさい、楓。君は僕の大事な大事な娘なのだからね」
ラティリアは槙宮に歩み寄ると、そのさらりとした金色の髪を梳くように指を絡め、愛しげに眼を細める。そんなラティリアを見上げながら、槙宮はただ微笑んだ。
自分を心配してくれる父の姿に、嬉しさを覚えながら、心配はいらないと首を振ってみせる。それにラティリアは、わかっているよと、僅かに悪戯げに微笑みながら、彼女を寝台の方へと導いた。槙宮は導かれるままにラティリアに従い、寝台の上にふわりと腰掛けた。
重みがかかった事で、寝台が僅かに揺れた。元々小柄な体型で造られただけに、それ程体重が重たい訳ではないのだが。
「さぁ、定期メンテナンスを始めよう。何処か、調子のおかしい所はあるかい?」
動作確認をするように、彼女の腕や足を看ながら、ラティリアは槙宮に問いかける。それに槙宮は僅かに考えるように自らの身体を見下ろした。
「……そうですね、少し、右肩の関節の動きが固くなったような気がします」
「それ以外は?」
「……特に自覚症状はありません」
槙宮の返答に、ラティリアはふむと小さく応えながら、彼女の服に手をかけた。
ぷちぷちとボタンを外し、上着をはだけさせる。それを見つめながら、槙宮は僅かに眼を細める。創造主である彼にとって、自分の裸体など、見慣れたものである。
別段羞恥心を覚える事なく、診察を続けるラティリアを見つめながら、着ていた全ての衣類を脱ぎ捨てて、槙宮はその裸体をラティリアの前にさらけ出した。
女性体を模して造られたその肌は白く、浅黒肌のラティリアと並ぶとその白さは更に際立った。一見しただけでは、人と全く同じ作りをしているその裸体。肌の弾力や温度すらも、人と変わりなく造られている。
内部もほぼ同じ構造をしており、体内を巡る血すらも、似たように造られている。
だが、唯一違うのは心臓。彼女には心臓がない。
体内の機関を動かす為の動力は、胸の内部に埋め込まれた大きな歯車だった。
カチ、コチ、カチと、まるで時計のような音を立てて、その歯車は回る。その音を確認するように、聴診器を彼女の胸に当てながら、ラティリアは耳を澄ませた。
特に異音は聞こえない。ここは問題はないようだと、次の箇所へと移った。
それを眺めていた槙宮は、ゆっくりと瞼を伏せて、その身をラティリアへと託した……










「はい。診察は終わりだよ、楓。お疲れ様。後は明日、精密検査をしよう」
長時間に渡り、診察を続けていたラティリアはにっこりと微笑み、本日の診察の終了を告げる。
それに槙宮は寝台に横たえていた身体を起きあがらせ、身支度を整えた。
その様子を眺めながら、ラティリアはふぅっと僅かに疲れたのか、息をつきながら、こきこきと肩を回している。
長時間に渡る診察は、高齢であるラティリアには堪えるようだ。外見そのものは青年の姿をしているものの、ラティリアは魔族の中でも高齢に分類される程の年齢だった。
人形師として、巨匠とまで謳われる彼の名声も、一朝一夕で築かれたものではない。
気の遠くなる程の歳月と努力を浪費して、ようやくここまで辿り着いたのだ。
その最高傑作とも言えるのが槙宮の存在だ。
彼女は彼が手がけた多くの“自動人形”の中で、唯一心を持った“自動人形”なのだ。
心という不確かなものを、人形に与える事は難しく、彼女自身、その心がどうやって自分に宿ったのかすら覚えてはいない。
まさに奇跡……としか言いようがない出来映えなのだ。
そんな槙宮だからこそ、ラティリアの溺愛ぶりも納得がいくというものだ。
「珈琲でも入れますわ。お父様」
身支度を整えた槙宮はふわりと微笑して、ラティリアを労るようにそう告げる。
ラティリアはすまないねと、苦笑を浮かべながら部屋の隅にあるソファーへと身体を沈めた。ぎしりと身体を包み込むソファーの弾力に、ふぅと小さく溜息をついた。
やがて、湯気の立つカップをトレーに乗せて、槙宮が戻ってきた。
それを受け取り一口含むと、珈琲独特の上品な苦みが口の中に広がった。
「うん、美味い」
「ありがとうございます。ミュウラー様も、珈琲が大好きな方でしてね。私も、随分珈琲の入れ方を勉強したものです」
最も、執事兼調理長である梅丸が入れる珈琲には勝てないのだけれどと続けながら、槙宮は苦笑した。
そんな彼女の様子を微笑ましげに見つめていたラティリアだったが、僅かに表情を曇らせると、手にしていた珈琲のカップをテーブルの上に置いた。
その様子の変化に槙宮は首をかしげ、ラティリアを見つめた。
「……楓。君の妹に、椛という子がいるのだけれど、覚えているかい?」
「……椛……確か何度か定期メンテナンスの時に。私と同型タイプの青い髪をした……」
「そう、その子だ」
記憶の底から一人の少女の姿を思い出しながら、槙宮は先を促すようにラティリアを見つめた。それにラティリアは僅かに眼を細め、憂いを帯びた表情を浮かべた。
「その子が、前回の定期メンテナンスに戻ってこなかったんだ。彼女の主に連絡を入れてみたのだが、返答もなくてね。元々、少しばかり性格に難がある青年だったから、忘れているだけかと思っていたのだが、今回もやはり返答がないんだ。いい加減、メンテナンスをしなければ、どんな誤作動を起こすかわからない。彼女を捜してはくれないか?」
憂いを帯びたラティリアの金の瞳が、真っ直ぐと槙宮を見上げる。その瞳を受け、槙宮は更に説明を求めるようにラティリアを見返した。
                            ケルベロス
「彼女の主も、クレヴァンス伯と同じ“番犬”の血族でね。クレヴァンス伯と同じように、人間界へと派遣されたそうだ。そして、椛もまた、主と共に人間界へと行ったようなんだ」
ラティリアの言葉に、ようやく合点がいったと、槙宮は僅かに瞳を瞬いた。同じ魔界にいるのであれば、探しようはいくらでもある。だが、限られた者しか行けない人間界では、行く事を許されないラティリアには探しようがない。その為、ミュウラーの力が必要なのだろう。
「……なるほど。わかりましたわ、お父様。私からミュウラー様へ頼んでみますわ」
「すまないね、楓。厄介な事を頼んでしまって」
「いいえ、お気になさらず。それに私にとっても、椛は大切な妹ですわ。彼女に何事もなければいいのですけれど……」
槙宮は僅かに心配そうな表情で頬に手を当てる。その様子を眺めながら、ラティリアもまた椛の安否を気にしているようで、僅かに暗い表情で、再び珈琲のカップを手に取った。
何事もなければいいのだけれど……と、一抹の不安を抱えながら、ラティリアは珈琲を口に含んだ。










「……と、言う事だそうです。ご主人様。どうか、お力を貸しては頂けませんか?」
槙宮はラティリアから聞いてきた話を、屋敷に戻ってすぐミュウラーへと伝えた。
談話室にミュウラーの他に、梅丸、ラフィオと、仕事の時と同様のメンバーが顔を揃えている。
ソファーに座って、足を組んでいたミュウラーはふむと呟くと、その視線を槙宮から梅丸へと移した。それに気がついた梅丸は、届いたばかりの新たな指令書を、持っていた封筒の中から取りだした。
「……本日届いた指令書です。トリストンという、ここから西に離れた農村で、十数年前から数年に一度のペースで行方不明者が出ていると。魔族の関与が疑われるので、調査しろとの事です。……本来は、ミュウラー様同様、“番犬”の役職についておられるオーレルという方がこの地方の管轄なのだそうですが、連絡が付かないそうです。その為、一番近くのミュウラー様へ、この指令が回されたようですね」
指令書を読み上げた梅丸は、ぱたりと紙面を閉じると封筒の中へと戻し、ミュウラーへと手渡した。それを受け取ったミュウラーは手紙を一瞥し、僅かに眼を細めた。
「……連絡が付かない“番犬”、行方不明者。そして、自動人形……か。どうも、きな臭いな」
ぼそりと呟くミュウラーの様子を、反対側のソファーに座るラフィオが、お茶請けにだれているクッキーをかじりながら、彼の返答を待つように眺めている。
「何か、めんどそうな指令だなぁ。ことわっちまえば?」
「……馬鹿を言うな。断る事など最初から出来はしない」
その赤い瞳に僅かに悪戯げな色を浮かべて、軽口を叩くラフィオを一蹴して、ミュウラーは椅子から立ち上がる。そのまま、何処か不安げにしている槙宮を見下ろすと、手にしていた指令書を彼女に手渡した。
「……ラティリアにも色々世話になっているからな。椛とやらの捜索も平行して行うとしよう。……それでいいか?槙宮」
ミュウラーの決断に僅かに眼を見開いた槙宮は、渡された指令書を受け取ると、その不安げな表情を和らげた。
「はい、ありがとうございます、ご主人様」
「……その指令書はいつもの場所に保管してくれ」
「はい。かしこまりました」
感謝の意を伝えるように、ぺこりと頭を下げる槙宮の様子を一瞥して、ミュウラーは再度梅丸へと視線を投げた。
「そうなると、まずやって貰う事がある。頼めるか?梅」
その視線を受けた梅丸は、そのにこやかな表情のまま僅かに眼を細めると、背筋を伸ばしかしこまった様子で一礼した。
「……ミュウラー様のご命令とあれば、なんなりと」
梅丸の返答に、ミュウラーはうむと小さく応え、静かな声で彼に指示を与えた。










トリストンという村は、ミュウラー達が拠点としている街から西へ離れた位置に存在していた。
周りを畑と森に囲まれ、住人もさほど多くはない。だが、村と呼称されるには少し大きいそんな場所だった。街道沿いにある村という事もあり、ここを通り過ぎていく旅人の姿をちらほらと見受けられる。
閉鎖的な村ではあるが、旅人の行き来がある分、村と村の交流すらないような農村よりは旅人への対応は寛大だった。
それはひとえに、旅人達からの収入が村を潤しているからに他ならない。
持ちつ持たれつの関係は何処でも変わる事はない。
普段の執事服を脱ぎ捨て平民の衣服を身に纏った梅丸は、そんな村へと足を踏み入れていた。
「……ふむふむ、それで?」
「でね、あそこの家の子といったらねぇ……」
村の中で井戸端会議を開いているご婦人方は情報通だ。彼は親しみやすいその柔和な顔立ちと物腰で、彼女たちの好感を買ち取ると、持ち前の交渉術で情報を引き出した。
黒革の手帳にメモを取りながら、時折相づちを打っては手際よく必要な情報を仕入れていく。
勿論、ご婦人方は話し好きな為、必要のない事もぺらぺらと喋ってくれるのだが、その辺は持ち前の温厚さで、聞き上手な対応を貫き通す。
「しかし、あんた。こんな山奥までご苦労な事だねぇ。新聞記者さんなんだって?」
「……おや、新聞記者さんなのかい?若いのに、えらいねぇ」
「ほら、また出たでしょ。行方不明者。その事件を調べに来たんですってよ」
ふとご婦人の一人が、梅丸を労うようにそんな事を口にする。それに途中から会話に参加した別のご婦人が驚いたような表情で梅丸を見つめた。
素性もしれない者がいきなり、村で起きている事件の事を調べては怪しがられるのが落ちだ。こういった情報収集の際は、最初に身分を明かし、相手の信用を勝ち取らなければいけない。偽の情報でも、刷り込んでしまえばそれがその人の真実となる。
新聞記者とでも偽っておけば、ある程度誤魔化しも効く。身分の詐称は常套手段だった。
「まぁ、これが仕事ですし。それにいろんな場所に行けて、旅好きの僕としては結構気に入っていますよ」
にこやかな表情で、さらりとそれらしい相づちを打つ梅丸。そんな彼の笑顔に騙されているご婦人方は、彼の嘘を見抜く力はなかった。
「あんた、いい男だねぇ。うちの娘の婿にどうだい?」
「あ、抜け駆けなんてずるいよ。うちの娘なんかもいいよぉ」
「都会に戻らないで、ここで暮らしなよぉ。何もない所だけどねぇ」
ご婦人方は梅丸に相当好感を抱いたようで、冗談めいた事まで言い始める始末。その言葉に梅丸は苦笑を浮かべるしかなかった。
と、そんな梅丸達の横を、一人の女性がふらりと通り過ぎた。
さらりとした青い髪を無造作に垂らし、黒いメイド服に身を包んだその女性。右手に買い物篭を提げている所を見ると、食材の買い出しか何かだろうか。
気配も音もなく、いきなり降って沸いたようなそんな錯覚を抱き、梅丸は驚いた瞳で彼女を見送った。
「……あの方は?」
梅丸は歩き去っていく女性を目で追いながらご婦人方に問うと、彼女たちは今までのにこやかな表情を一変させて、冷たい瞳でその女性の後ろ姿を見た。
「……あの薄気味悪い女は、ここの村のはずれにある屋敷のメイドだよ。話しかけてもにこりともしない無愛想な子だ」
冷たい視線のまま、彼女たちは先程のメイドについて話してくれる。相当、村の中では異質な存在として見られているのか、彼女の事を快く思っていない人が大半のようだ。
「……村のはずれに屋敷があるのですか?」
梅丸は先程の女性の事から、話題を逸らすように問いかけると、ご婦人の一人がすいっと村の外の森の一角を指さした。
木々の間に白い屋根が見え隠れしている。ここから見ても、その建物は随分大きそうで、ミュウラーの屋敷と同じ程はあるのではないだろうかという程のものだった。
「お貴族様のお屋敷さ。……最も、あたしらには関係のない話だけどね」
「どんな人が住んでるかも、知らないねぇ」
「…………そうですか……」
口々に言うご婦人方の話に、適当に相づちを打ちながら、梅丸の視線はその屋敷へと注がれていた。











こつこつと靴音を響かせて通路を歩いてくミュウラーの後を、ちょこちょこと少し早足でラフィオが続く。
魔界の首都にある騎士団本部へと顔を出したミュウラーは、真っ直ぐにとある部屋へと向かっていた。
“番犬”の総取締役である騎士団長の部屋の前に辿り着いたミュウラーは、ノックもそこそこに、無造作にその扉を開け放った。
「ジャック・ローズ。いるか?」
ぎぃと扉が僅かな悲鳴を上げる。開け放った部屋を一瞥して、ミュウラーは部屋の主の名を口にした。
無遠慮な来訪者の姿を視界に捕らえた部屋の主は、その切れ長の瞳を細め、僅かに口元に笑みを浮かべた。
「そろそろ来る頃だと思ったよ。クレヴァンス伯」
凛と澄んだ声で告げながら、赤い髪を持つその女性は、眼鏡を中指で押し上げた。
書類の積み上げられた机に座っていた彼女は、ゆったりとした動作で立ち上がり、ミュウラーを迎えた。
魔界の全土を守護する騎士団の最高責任者であり、同時に“番犬”の総取締役でもある彼女。名をジャック・ローズという。
そんな彼女の両側には、二人の少年少女が控えていた。
白に僅かに青い色が混ざったような髪を持ち、歳はラフィオと同年代程の子供達。同じ顔立ちをしている事から、二人が双子である事がわかる。
少女の方は髪が長く、頭の上で結ばれた青いリボンが印象的だった。
彼らはジャックの補佐を務めている双生児。少女の方がラルカ。少年の方はキルシュという。
まだ見習いの段階ではあるが、副団長という任に就いており、実力も相当なものだ。
「呼びつけてすまないな。見ての通り、仕事が多くてな。ここはいつでも人手不足だ」
ジャックは僅かに口元に笑みを浮かべると、肩を竦めてみせる。それにミュウラーは僅かに首を振り、
「不躾な来訪で悪いが、時間が惜しい。本題に入らせて貰えるか?」
と、いきなり本題を持ちかけた。その様子にジャックは変わらないなと口の中で呟きながら、応接用のテーブルへと移動した。
ミュウラーとジャックは古くからのつきあいだ。実質的には上司と部下に当たる関係なのだが、長いつきあいの中、その関係は友人としての気安さが混じっている。
元々、“番犬”自体は騎士団の一部とはなっているものの、その身分自体は相当位の高いもので、騎士団の中でも別格の立場となっていた。
魔族の身分はその魔力の大きさに比例する。魔力が高ければ高い程、その身分は保証されるというものだ。
ミュウラーの家系もまた、相当な魔力を持つ血族で、位もジャックより高い程だった。
“番犬”の血族自体が貴族の集まりのようなものであるが故に、実力主義である騎士団の制度では押さえられない部分もあった。
だが、彼女の統率力は相当なもので、彼女に逆らおうという“番犬”はいなかった。
文武両道に優れており、魔王からの信頼も厚いと聞く。
ジャックはミュウラーに席を勧めながら、彼の傍らに控えるラフィオを一瞥し、冷たい視線を投げた。
「……なんだ、まだその半魔を連れているのか」
ジャックの言葉に、ラフィオが無言のまま視線をジャックに向ける。睨む訳でもなく、ただ見つめるその赤い瞳。まるで喧嘩を売るようなその挑戦的な瞳に、ジャックは僅かに目を細めた。
半魔とは言葉の通り、半分魔族の血が混ざった者の事を言う。
彼、ラフィオは人間と魔族の合いの子であったのだ。それ故に、人が持つはずのない魔力を持ちえている。
だが、魔族の間では、人間と混ざる事は最大の禁忌とされており、半魔を生み出す事自体が最大の罪とされている。
そして、実際であれば、半魔は禁忌の存在であるが故に、処分される決まりとなっているのだ。
界を跨ぐ者として、半魔はどちらの存在とも言えない。人にもなれなければ、魔族になる事も出来ない。どちらの世界でも、迫害を受ける事となる彼ら半魔は、悲惨な最期を迎えるのが、世の常だった。
そんな悲しい存在は生み出してはならないと、人と魔の王は世界の法として取り決めていた。
故に、ラフィオの素性を知る者は、騎士団内部ではこの室内にいる者達だけであった。
ラフィオは人間の子供とされ、とある事件をきっかけにミュウラーの使い魔となり、以後、補佐を務めている……と、言う事になっていた。
頑なにラフィオの処分をミュウラーが拒んだが故、そういった方法で隠蔽工作を施したジャックは、ある意味ではラフィオの命の恩人であった。
その事を理解しているのか、ラフィオはジャックに対して無闇に刃向かったりはしなかった。
「ふん、眼だけは一丁前だな小僧」
「……そりゃ、どうも」
ラフィオを一瞥し、僅かに鼻で笑うジャックの様子に、ラフィオはいけしゃあしゃあと、そんな言葉を返答した。物怖じしない性格は何処へ行っても健在だ。
そのラフィオの様子に、ジャックの後ろにいた双子がくすくすと小さな声で笑う。彼らは歳頃も近い所為か、ラフィオに対して親近感を抱いている。
時折顔を合わせては、お互いの戦闘力を高める為に組み手を行ったりしているらしい。
そんな彼らの様子に、ジャックは僅かに肩を竦めて見せた。
「……ラルカ、キルシュ。この小僧の相手をしてやれ」
このままでは話が進まないと判断したのか、体のいい厄介払いとして、二人に告げる。
その言葉を待ってましたと言わんばかりに、二人は顔を輝かせ、ラフィオに駆け寄った。
「闘技場行くぞ、ラフィ。今日こそ打ち負かしてやる」
「また返り討ちだな」
「今度こそ負けないんだからー」
そんな会話をしながら、三人は連れ添って団長室を後にする。その様子を無言のまま見送ったミュウラーはようやく本題に入れると、小さく溜息をついた。
「さて、本題に入ろうか、クレヴァンス伯」
「……ああ。今回の連絡の付かない“番犬”について、聞かせて貰おうか」
向かい合うようにソファーに腰掛け、ミュウラーは手を組んでジャックを見据える。
それにジャックは机の上から一冊の黒い背表紙の本を取り上げて、ミュウラーの前に差し出した。
ジャックはその細い指で、ぱらりと本の頁をめくり、とある場所でその指を止めた。
その本はミュウラーを含む“番犬”の血族の者達の経歴などが書き記されているもので、ジャックが開いたその頁には、現在連絡不通となっている者の名が記されていた。
「……この男が、オーレル・レヴィアンスだ。……まぁ、性格は……お調子者、と表現すればいいのだろうか……」
僅かに複雑そうな表情を浮かべながら、面識のあるジャックは顔をしかめる。その様子に、ふむと顎に手を当て、その資料に目を通した。
こんな歯切れの悪いジャックも珍しい。何でもずばりと言いのける彼女に言い淀まれる性格とは、相当複雑な性格をしているのだろう。
ふと、ラティリアの話に出た連絡不通の“番犬”について思い出し、その人物もまた、複雑な性格と言われていた。同一人物の可能性が高いと、予想通りの結果に僅かに眼を細めた。
「100年程前から、連絡が途絶えがちだったのだが、最近では一切つかなくなってしまった。彼の消息を突き止め、報告してくれ。……彼の住所はそこに記載されている。人間界の地理はそちらの方が詳しいだろう」
ジャックが指し示す住所欄を見たミュウラーは僅かに顔をしかめた。その様子に、ジャックもまた眼を細め、彼が考えた事と同じ事を連想した。
「……お前が今、何を考えているかはわかる。その可能性はないとは言えないだろう。場合によっては、お前の手で裁いて貰う事になるかもしれない」
「……まぁ、それも仕方のない事だな」
ミュウラーは僅かに顔をしかめて、小さく溜息をついた。真っ直ぐと見据えるジャックの瞳が、有無を言わさない雰囲気を醸し出している。
この事件の顛末がどんな結果になろうとも、やり遂げる以外、ミュウラーに道は残されていない。
それが、彼の背負った業なのだ。
出来れば、自分が予想した結果でなければいいと、ただそれを願うだけだ。
彼が見据えたオーレルの個人情報には、今回の事件が起こっている場所と同名の村の名前が記載されていたのだった。










「ただいま戻りました。ミュウラー様」
屋敷に戻り次第、梅丸は平民を装った服装のままで、ミュウラーの書斎を訪ねた。背筋を伸ばし、一礼する彼の様子を眺め、机に向かっていたミュウラーはうむと小さく頷いた。
既にミュウラーの傍らには槙宮とラフィオが控えている。
梅丸はメモを取ってきた手帳と、村人から預かってきた資料をポケットから取り出すと、まとめてきた情報を報告し始めた。
「……事件はほぼ40年程前から始まったみたいですね。最初に行方不明になったのは名も知らぬ旅人だったそうです。数年に一度のペースで、一人ずつ、行方不明者が増えていったようです。村人に限らず、村に立ち寄った旅人からも、消息がわからなくなった者も出ているそうで、行方不明者同士の繋がりは見られませんでした」
梅丸は報告しながら、遺族から預かってきた行方不明者の写真をミュウラーに手渡した。
ミュウラーはそれを受け取ると、ぱらりとめくり、その人物達を確認する。
「……なんか、みんな似た顔してるなぁ」
ひょいっと、ミュウラーの背後から写真を覗き込んだラフィオは、何気なく呟き、首をかしげる。写真に写った者達は皆、深い藍色の髪を持ち、年齢は20代前半といった外見の男性達だった。
「はい。皆、似た顔立ちをしており、若い男性ばかりが行方不明となっています。共通点があるといえば、その程度ですね。行方不明になった年代なども、まちまちですし。また、遺体などは一切発見されていませんので、森の化け物にでも食われたのではないかと、村人達の間では囁かれているようです」
ぱらりと手帳をめくりながら、梅丸は簡潔に情報を告げる。その言葉に、ミュウラーは僅かに眼を細めた。
「森の化け物?」
「……根も葉もない村人達の噂ですよ。……そちらの村にも、この屋敷と似たお屋敷が建っていましてね、村人達の間で気味悪がられているようです。森の化け物とは、そちらの方達の事か、または森に住む獣か何かの事でしょう。ただの噂ですので、確証はありませんが」
ミュウラーの問いに、梅丸は僅かに肩を竦めながら応える。調べてきた事を全て報告し終わった梅丸は、ぱたりと手帳を閉じ、報告を終えた。
「ご苦労だった、梅丸。あとは直接行って、確かめるとしよう」
「……かしこまりました。こちらが村の地図です。あと、情報収集中にその屋敷のメイドらしき女性を見ましたよ。青い髪の小柄な女性でした。……顔までは見えませんでしたが」
その言葉にミュウラーはふむと呟きながら、手に持っていた小さな宝石を梅丸に手渡した。緑色の小さなその宝石は、どうやらエメラルドの原石のようだった。
それを受け取った梅丸は、目を輝かせ、嬉しそうに表情をゆるめた。
「わぁ、ありがとうございます。……しかも、これ、魔界産のエメラルドじゃないですか」
先程までのきりっとした様子は何処かへと吹き飛ばし、へにゃりと微笑む梅丸の様子に、ミュウラーは僅かに眼を細めて苦笑した。
「騎士団本部へ行く予定があったので、ついでにな。大事に食えよ」
「ありがとうございますぅ」
宝石を大事そうに握り締め、梅丸は本当に嬉しそうに笑った。その様子に、ラフィオは僅かにげんなりした顔で梅丸を見つめ、
「なぁ、そんなのが美味いのか?」
と、信じられないものを見るような瞳で問いかけた。それに梅丸はこくりと頷き、恍惚そうな表情で語り始めた。
「ええ、特にエメラルドが美味しいですね。一番、僕の体に合っていますし。魔界産は味がまろやかで……」
「あー、はいはい、よくわかんねぇから、やっぱいいや」
自分で聞いておきながら、ディープな内容になると予想したラフィオは、ずばりと一蹴して話題を切り替えた。それに話して聞かせたかったのか、梅丸は僅かに不満げな表情をしたのだった。
「……青い髪のメイドですか……」
今まで静かにミュウラーの傍らで報告を聞いていた槙宮は、僅かに表情を曇らせ、俯いた。その様子に、ミュウラーは眼を細めた。
「……今回は屋敷に残れ、槙宮」
「え?」
ミュウラーが唐突に発したその言葉に槙宮は驚き、顔を上げる。ミュウラーはそんな槙宮を眼鏡の奥から見つめた。
「……場合によっては、辛い結果を見る事になるかもしれない。今回は残れ。私とラフィオだけで十分だ」
真っ直ぐと見据える金の瞳が、有無を言わさない雰囲気を醸し出す。自分を気遣ってのその言葉に、槙宮は感謝しながら、その瞳を見つめ返した。
「お気遣い、ありがとうございます。ですが、私はご主人様と共に参ります。私の役目は、貴方様をお守りする事。それを違えるつもりはございません。たとえ、ご主人様の命でも、お受け出来ません」
僅かに迷いに揺れていた青い瞳は影を潜め、意志の強い瞳が真っ直ぐとミュウラーを見つめる。その瞳を受けたミュウラーは、目を伏せると、小さく溜息をついた。
彼女は頑固で、決めた事はやり通す。それは自分が何と言っても聞かない程に。
それを理解しているのか、それ以上ミュウラーは何も言わなかった。
「……わかった。同行を許す。……私と共に来い、槙宮」
「はい。地獄の果てまでも、お供しますわ。ご主人様」
にっこりと微笑んで、槙宮は同行の意を表明した。どんなに自分が痛かろうが、辛かろうが、彼女はミュウラーに付き従う。
それは主人を守る使命の為か、それとも、彼女の心がそれを望むからか。
それは本人のみが知る所。
「……じゃあ、まっきーが行くなら、俺はおとなしくお留守番してるよ。お邪魔虫はいない方がいいだろうしなー」
そんな二人の様子を、おとなしく静観していたラフィオは、にやにやと意地悪げな笑みを浮かべて、わざとらしく良い子ぶった言い方をする。それにミュウラーはぎろりと彼を睨みつけ、がしりとその小さな頭を掴んだ。
「なにが、じゃあ、だ。お前が行かなくてどうする」
「えー、だって、まっきーがいれば問題ねぇだろー」
「馬鹿が。主を守るのが使い魔の仕事だろう」
「えー、めんどくせぇー……てか、いてぇ、いてぇ。離せよ、伯爵!」
ぎりぎりと頭を締め付けてくるミュウラーの手を掴み、ラフィオが抗議する。いつものやり取りを始めた彼らの様子を眺め、槙宮と梅丸はくすりと苦笑を浮かべた。
元々、ラフィオが彼らの元に来るまでは、ミュウラーと槙宮、二人だけで仕事をこなしていた。だが、やはり戦闘能力で言えば、槙宮よりもラフィオの方が優れている面はある。
槙宮だけでも問題はないかもしれないが、万が一の事を考えると、連れて行かない訳にはいかなかった。
それに今回は、場合によっては槙宮にとって、望ましくない結果が訪れる可能性がある。その際、果たして、彼女が戦えるかどうか……というのを危惧しなければいけなかった。
まぁ、いざとなれば、自らが戦う準備もあるのだけれど。
「……梅、馬車を準備しておけ。明日の朝、トリストンに向けて出発する」
「はーい、かしこまりました」
ギリギリと締め付けていた手を離し、ミュウラーは簡潔に告げる。それに梅丸は応え、本日の調査は終了したのだった。






後編へ続く……


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